津軽線の全線乗車レポートをお届けしていきます。
2022年8月の豪雨被害により、長らく代行バスでの運行が続く津軽線の蟹田駅~三厩駅。
津軽線の末端区間廃止がほぼ確定でもあるように、鉄道での復旧はもう望めない状況です。
今回はそんな津軽線をバス・鉄道で全線乗車してみることに。
沿線の様子は現在どうなっているのでしょうか?
当ブログ「東北旅びより」では、以下の内容を紹介していきます。
- 津軽線 普通列車の乗車記(青森駅~蟹田駅)
- 津軽線 代行バスの乗車記(蟹田駅~三厩駅)
- 津軽線 代行バスの乗り方ガイド
ぜひ参考にしてみてくださいね。
津軽線とはどんな路線?
701系
GV-E400系
津軽線は、青森県の青森駅~三厩駅間の約56kmを結ぶ路線。
- 青森駅~蟹田駅 701系電車での運行
- 蟹田駅~三厩駅 GV-E400系気動車での運行
以上のような運行体系をとっています。
秘境感漂う沿線風景から、巷では「最果てのローカル線」と呼ばれることも。
厳密に言うと、最果てのローカル線は津軽線ではなく、同県を走る大湊線なのですが…
(本州最北端の駅である下北駅が沿線内にあるため)
津軽線の方があまりにも最果て感満載なので、このように言われているのだとか。
新海はTwitterで「学生時代に何度かひとり旅をして、東北、青森は静かで美しい場所だなあと思っていたんです」「ヒロキたちが使っている津軽線沿いの駅は実在のものです」と述べている。
引用:Wikipedia
「すずめの戸締まり」「天気の子」などを手掛けたアニメーター、新海誠監督の作品のモデルにもなった津軽線。
「雲のむこう、約束の場所」という作品内で、沿線の風景が使われています。
アマゾンヘビーユーザーの筆者、この事実を知り早速プライムビデオで拝見しました。
本当に沿線風景の描写がリアルで、さすが新海誠作品だなあと。
個人的に推してる青森の津軽線。
車窓はもちろん、沿線から漂う最果て感がまじでたまらん…
秘境ローカル線の旅を楽しみたい人には超ぴったりの路線だと思う🥰 pic.twitter.com/BZpRrQMC16
— なか@東北旅びより (@naka_travel) June 10, 2021
車窓から見える広大な陸奥湾。
沿線には心打たれる日本の原風景が多く、まさにローカル線の旅のイメージにピッタリな路線だと感じます。
津軽線 蟹田駅~三厩駅は廃線・バス転換へ…廃止日は2027年度春予定
2022年8月の大雨により、長らく運休となっていた津軽線の蟹田駅~三厩駅間。
- 赤字ローカル線であること
- 運休区間だけでも6億円の復旧費用を要すること
- 中小国~三厩の利用者数がここ30年ほどで約70%減少したこと
以上の理由から、この区間の存廃を巡り議論が続いていました。
しかし2024年5月23日の首長協議にて、唯一鉄道での復旧を望んでいた今別町が苦渋の決定としてこれを断念。
事実上の廃線がほぼ確定しました。
今後はバス・タクシーへ転換していくとのこと。
「新幹線の乗換駅である津軽二股まで残る可能性もゼロではないのでは…?」と超絶うっすら期待してましたが、それも叶わず。
- 大平駅~津軽二股駅間の被害が特に大きいこと
- 利用者の大幅な減少
- 沿線人口や採算の問題
これらを踏まえると、鉄路復旧断念となるのも仕方ないのかもしれません。
奥津軽いまべつ駅は、これで正真正銘の新幹線単独駅となってしまうわけですね。
JR東日本は5日、津軽線・蟹田-三厩間(青森県外ケ浜町と今別町)の鉄路廃止時期について、2027年度春を目標に手続きを進めていると明らかにした。
なお津軽線の蟹田駅~三厩駅間の具体的な廃止日はまだ決まっていないよう。
ただ、2027年度春を目標に手続きを進めているとのこと。
そうなると廃止日は2028年3月のダイヤ改正日でしょうか?
代替交通の整備なども合わせて進める必要があるはずですし、やはり少し先になるみたいですね。
まだ3~4年先の話にはなりますが、ゆっくり沿線を巡るなら今のうちにしておいた方がいいかもしれません。
廃線が近づくにつれ人も多くなってくるでしょうから。
【乗り方ガイド】部分廃止が決まった津軽線・代行バスで行く乗り鉄旅…沿線の現在は?
青森駅から蟹田駅までは701系電車で
出発地は青森駅。
ここからは以下のような行程で進んでいこうかと。
青森駅
(津軽線) 蟹田駅 (代行バス) 三厩駅まず青森駅より乗車するのは701系電車。
奥羽本線や羽越本線などでも活躍する車両です。
車内は座席が一列に並んだ「ロングシート」と呼ばれるもの。
北東北の普通列車では標準的なタイプですね。
ざっと見た感じ、2両編成の車内にはそれぞれ5~6人いる程度の乗車でした。
ちなみに津軽線の1日あたりの運行本数は以下の通り。
- 青森駅~蟹田駅 9往復
- 蟹田駅~三厩駅(被災前) 5往復
場合によっては2~3時間待ちになることはあるものの、蟹田駅以南はまだ恵まれた本数なのかと。


被災前は日中に1往復のみ、全区間を走行する列車があったことをふと思い出します。
青森駅に「三厩」の文字を掲げた列車が来る日はもう二度と来ないと思うと、やはり寂しいものがありますね。
定刻通りに出発した津軽線は奥羽本線と分岐し、津軽半島北部へ。
油川駅、津軽宮田駅と順番に停車していきます。
しばらくは住宅地も車窓から確認できましたし、時間帯によっては若い人の乗り降りも多い模様。
この辺りは学生の利用者も比較的多いのかもしれませんね。
蓬田駅を出発すると民家よりも田畑が徐々に目立ってきました。
車窓右側からは陸奥湾が少しだけ見えます。
津軽線の車窓から陸奥湾と下北半島を。 pic.twitter.com/T2NQPlF64f
— なか / 東北旅びより (@naka_travel) September 18, 2024
瀬辺地駅を過ぎると、陸奥湾に急接近。
天気がいいと下北半島も車窓から確認できます。
青森駅から40分ほどで蟹田駅に到着。


乗車した電車は折り返し青森行きとしてスタンバイ。
そして電車で来れるのはここまで。
蟹田駅より先は気動車での運行…だった津軽線も、今や代行バスでの運行に。
かつて多くの優等列車が発着したであろう長いホームに、余計もの悲しさを覚えます。


蟹田駅の駅舎および待合室。
徐々に数を減らしつつあるみどりの窓口は健在のよう。
室内にはイス、自販機はもちろん空調も効いていますし、特に不自由なく列車を待つことはできそうです。
蟹田駅の時刻表。
ここから三厩の文字が消えるのも時間の問題…
津軽線が青森駅から蟹田駅まで開業したのは1951年のこと。
その7年後、1958年には三厩駅まで延伸。
あと少しで再びここが津軽線の終着駅となってしまうわけですね。
代行バス乗り場は蟹田駅の目の前
津軽線代行バスは蟹田駅前からの発着。
使用車両は中里交通の中型バス。
余談ですがデマンド型乗合タクシー「わんタク」も同じく蟹田駅前から発着しています。
切符を運転士さんに見せ乗車。
車内は全車自由席なので好きな席を利用してOK。
ちなみにバス車内で運賃の取り扱いは実施しないため、事前に乗車券を購入しておくのがおすすめです。
定員30名ほどの中型バスのため仕方ないですが、スペースは少し狭め。
休日の夕方に利用しましたが、乗車人数は筆者を含め3名。
そのうち地元民と思われる人は1名でした。
学生利用者は全員が蟹田駅で下車したようで、バスに乗り継ぐ人は1人もおらず…
定刻通りに蟹田駅を出発。
蟹田の中心エリアを抜け、津軽線の線路に沿うような形で県道12号線を北上していきます。
踏切を渡り中小国駅へ。
中小国駅周辺までは北海道方面へ向かう貨物列車も走行するため、電線も線路も綺麗に整備されていますね。
中小国駅を出発後、十字に交差する津軽線と北海道新幹線。
貨物列車との並走区間も終わり、電線がなくなったのが分かります。
貨物列車は北海道新幹線と合流し青函トンネルへ…
中小国駅を出発し、旧津軽海峡線と分岐する津軽線。
この何気ない車窓も貴重なワンシーンとなってしまうとは。 pic.twitter.com/7nXrglqXOs
— なか / 東北旅びより (@naka_travel) November 30, 2024
在りし日の津軽線から眺める旧津軽海峡線。
まさかこの何気ない風景も貴重なワンシーンとなろうとは。
代行バスは程なくして大平駅に到着。
米坂線代行バスと同様、基本的には駅前の道路沿いに停車していくスタイルのよう。
津軽線代行バスの車窓 pic.twitter.com/nsn51zdVBz
— 東北旅びより@東北の一人旅メディア (@tohoku_travel) November 24, 2024
大平駅を出発すると、代行バスは県道14号線へ。
しばらくすると外ヶ浜町、今別町の境にあたる小国峠に差し掛かります。
小国峠と言えば色んな場所で聞く名前ですが、新潟の長岡市あたりにも同名の峠があったような。
また小国という名称は、新潟・山形を結ぶ米坂線沿線にも親しみ深い名前。
時代の移り変わりには逆らえない…と言ってしまえばそれまでですが、米坂線もどうなってしまうのか…
心が落ち着かないですね。
奥津軽いまべつ駅・津軽二股駅を訪問
大平駅から15分ほどで津軽二股駅(奥津軽いまべつ駅)に到着。
峠を越えたのちに突如として現れる巨大で立派な駅舎…やはり圧倒されるものがあります。
日本一小さい新幹線のまち、今別町に所在する奥津軽いまべつ駅。
停車する列車は上下各7本ずつ。
1日の平均乗降者数としては、日本の新幹線駅では最少といわれているそう。
駅内には売店などはなく、待合室・自販機があるのみです。
奥津軽いまべつ駅からは新幹線・代行バスの他、乗合タクシーで三厩方面や津軽中里駅方面へ行くことも可能。
駅前には「道の駅いまべつ」がポツンと一軒。
津軽二股駅の駅舎跡地に建てられた、レストラン・売店併設の道の駅です。
今別町の市街地・集落からは離れているため、駅前は閑散としている印象。
青春18きっぷのルール変更があったことで、さらに寂しくなってしまうのでは…(とは言っても少しの差かもしれないけど)

道の駅のすぐ横には津軽二股駅。
- 津軽二股駅 JR東日本
- 奥津軽いまべつ駅 JR北海道
以上のように管轄が異なるため別駅扱いなんだそう。
北海道新幹線の開業前…奥津軽いまべつ駅の前身でもある海峡線の津軽今別駅も同様の扱いだったらしいです。
鉄路が断たれ早数年…
もうここに気動車が戻ってくることはないであろうホーム。
生い茂った草木と錆びた線路。
その横に構える立派な駅舎と、颯爽と走り抜ける新幹線の姿に余計もの悲しさを覚えます。
上から見ると自然へのかえり具合がよくわかります。
津軽線の津軽二股駅が正式に廃止されれば、奥津軽いまべつ駅は正真正銘の新幹線単独駅に…
そして同時に、今別町からは在来線が消滅することになります。
復旧を最後まで要望し続けたのも今別町でしたが、このことも理由のひとつだったのでしょうか。
大川平駅に到着。
鉄道の大川平駅までは歩いて2分ほど。
バス停にはプレハブの待合室が設置されていました。
夕暮れ時の今別町の漁港をゆったり堪能。
【青森県 津軽線】
東北最果てのローカル線として有名な津軽線。沿線から漂う秘境感がたまらん…!#コロナで気が滅入るからみんなの動画で旅行しようぜ pic.twitter.com/3KrkYw7faY
— なか / 東北旅びより (@naka_travel) April 8, 2020
鉄道に乗車した際も、この辺りはとても景色がよく印象的でした。
バスでも終点近くまでオーシャンビューを楽しめます。
もう列車が来ることはない終着駅 三厩駅
蟹田駅から約50分、津軽線代行バスは三厩駅に到着。
乗客を降ろしたのち、バスは終点の三厩体育館へ向けて発進していきました。
ただ乗客は三厩駅到着時点ですでに全員降車したよう。
津軽半島最北端の駅、三厩駅。
夕方かつ中心エリアからは離れているため、周囲はかなり閑散としています。
ちなみに三厩の中心エリアには三厩体育館で降りた方が近いです。
被災前の駅舎
被災後の駅舎
被災前と被災後の三厩駅舎。
外観は特に変わった様子はなく、ここだけ見ると現役バリバリ。
駅舎内もあの頃のまま…
三厩駅が無人化したのは確か2019年頃。
つい最近まで有人駅がここ津軽半島最果ての地に存在した…
その事実に余計もの悲しさを覚えます。


時刻表と運賃表。
これも近いうちに過去のものとなってしまうなんて。
被災前の駅名標
被災後の駅名標
ここ何年かの間に駅名標にはイラストが追加されたよう。
以前は車庫もありましたが、現在は撤去されています。
被災前のホーム
被災後のホーム
徐々に自然へかえりつつあるホーム…
旧三厩村の住民にとって悲願だったであろう鉄道開通。
かつては青函トンネルの作業従事者でも賑わい、通勤・通学の足として活躍した津軽線。
時代の流れとはこれほどまでに残酷なものなのかと、改めて実感します。
津軽線が正式に廃止されれば、果たしてこの駅もどうなるのか。
駅舎はバスの停留所などとして再利用される可能性もゼロではなさそうですが、なにせ中心エリアから離れていますし…
もしかしたらこのホームも線路も、そして駅舎もすべて跡形もなくなってしまうのでしょうか。
夜の深まる三厩駅を後にし、蟹田駅からは電車に乗り換え青森駅へ。
休日ということもあってか、青森方面へ向かう人も意外といるようで、2両編成の車内にはそれぞれ15人程度。
やはり蟹田駅を境に利用者の特色もだいぶ違うようです。
何年か前に「いつかまた三厩まで列車で来よう」とそう深く考えずに乗車したのが最後になってしまうとは。
大好きな路線、大好きな区間だっただけに寂しい気持ちはぬぐえません。
でも時代が移り変わるって、こういうことなんでしょうね。
今後の動向に注目しつつ、新たに生まれ変わっていく沿線の姿を見届けていきたいと思います。
【乗り方ガイド】部分廃止が決まった津軽線・代行バスで行く乗り鉄旅…沿線の現在は?|まとめ
以上、今回は「【乗り方ガイド】部分廃止が決まった津軽線・代行バスで行く乗り鉄旅…沿線の現在は?」という内容でお届けしました。
鉄道廃止がほぼ確定した蟹田駅~三厩駅。
時代の流れと言ってしまえばそれまでですが、やはり寂しい気持ちはぬぐえません。
ただ交通機関はあくまでも住民のためのもの。
どうか転換後の交通網が、より地元民の生活に寄り添った形のものであってほしいと願うばかりです。
今後の動向に注目しつつ、新たに生まれ変わっていく沿線の姿を見届けていきたいと思います。


