実質廃線が決まった弘南鉄道大鰐線の全線乗車レポートをお届けします。
2027年度末での運行休止(事実上の廃止)が決定した、青森県弘前市を中心に活躍する弘南鉄道の大鰐線。
現実の厳しさを痛感するとともに、沿線の日常そのものを体験できる魅力あるローカル線だと感じました。
当ブログ「東北旅びより」では、以下の内容を紹介していきます。
- 弘南鉄道大鰐線・弘南線とは?
- なぜ弘南鉄道大鰐線は廃止になる?
- 弘南鉄道大鰐線の乗車記(大鰐駅~津軽大沢駅~中央弘前駅)
ぜひ参考にしてみてくださいね。
弘南鉄道大鰐線・弘南線とは?
青森県弘前市を中心に大鰐線・弘南線の2つの路線を運行する弘南鉄道。
国内最北の電化された私鉄としても有名です。
ちなみに正真正銘の日本最北の私鉄は、同じく青森県の津軽鉄道。
- 大鰐線 大鰐駅(大鰐町)~中央弘前駅(弘前市)
- 弘南線 弘前駅(弘前市)~黒石駅(黒石市)
弘南鉄道は以上の区間で運行しています。
中央弘前駅と大鰐駅の約14kmを結ぶ大鰐線。
全線単線で駅数は14駅。
中央弘前駅でのJRとの接続はないものの、大鰐駅とJR大鰐温泉駅は隣接しています。
また、ほぼ全区間においてJR奥羽本線と並走しているのが特徴。
弘南線は弘前駅から平川市・田舎館村を経て、黒石駅までの約17kmを結ぶ路線。
全線単線で駅数は大鰐線より少ない13駅。
弘前駅ではJR奥羽本線への乗り換えが可能です。
路線図の通り、弘前駅と中央弘前駅は鉄道での接続がありません。
2つの路線が独立した状態で、それぞれの地域輸送を担っているような印象を受けます。
弘南鉄道大鰐線が2027年度末(2028年3月)に事実上の廃線へ
弘南鉄道(本社青森県平川市)は27日、赤字続きの大鰐線(大鰐-中央弘前、13.9キロ)を廃線にする方針を示した。利用客の減少や電気料高騰などで今後も収益改善が見込めないためで、同日に弘前市役所で開かれた弘前圏域8市町村長の非公開会合で方針を説明。沿線の弘前、大鰐の両首長は「やむを得ない」と理解を示し、同線の廃線が事実上決まった。同社は2027年度末で運行を休止し、路線廃止に向けた手続きを進める考え。
引用:東奥日報社
2024年11月、弘南鉄道は大鰐線の運行休止(事実上の廃止)を発表。
物価高騰や人員不足、収支改善が見込めないなどの理由からだそう。
利用者数は1974年の約389万人をピークに年々減少し、2023年は約27万人…
全盛期の7%ほどにとどまっています。
沿線には複数の高校・大学、土手町を始めとする中心エリアがあるものの、少子化や相次ぐ商業施設の閉鎖・移転…
そんな中で起こった、設備の老朽化による脱線事故。
その状況から見るに、自治体としても、鉄道会社としても、これ以上の打つ手はなし…というところまで来てしまったのかもしれません。
開業から70年余り…地域と共に歩んできた路線がその歴史に幕を閉じることに。
悲しさと同時に、現実の厳しさをまじまじと見せつけられているような気持ちにもなり、言葉が出なくなります。
【乗車記】弘南鉄道大鰐線|廃止迫るローカル線で大鰐から中央弘前へ
特急つがるで青森駅から約45分、大鰐温泉駅で下車。
その名の通りここは大鰐温泉の最寄り駅。
レトロな温泉街の景観を楽しめる、大鰐町の玄関口です。
雰囲気抜群の大鰐駅南口駅舎。
JR大鰐温泉駅舎のすぐ隣にあるので分かりやすいです。
大鰐線内では唯一の乗り換え駅でもある大鰐駅。
ホームなどはJRとの共同使用であるものの、駅舎はそれぞれ別のものを有しているよう。
南口駅舎の中へ。
2009年4月に無人化された南口駅舎…
シャッターの降ろされた窓口、ずらりと並んだベンチが過去の賑わいを彷彿させます。
跨線橋を渡りホームへ。
手前はJR奥羽本線、奥が大鰐線の乗り場です。
JRの駅舎は温泉街方面である南口のみなのに対し、弘南鉄道は南北それぞれに設けられているのが特徴的。
北口駅舎は有人のようですが、営業時間は平日の一部時間帯のみ。
土日祝日は終日無人のよう。
自動券売機は窓口の営業時間内でないと使えません。
窓口の営業時間外に乗車する際は、カウンターから無札乗車証明書を取り、降車時に現金で支払う形になります。

大鰐線が発着する4番線、5番線ホーム。
1~3番はJR奥羽本線が使用しています。
かいそく中央弘前ゆき…
2006年までは大鰐線でも快速列車の運行があったそう。
現在、大鰐線の運行本数は朝ラッシュ時でも1時間に2本。
全14駅のうち行き違い可能な駅が5つもあるのは、快速時代の名残なのでしょうか。
中央弘前駅からやってきた列車が到着。
数分停車したのち、そのまま折り返します。
どうやらほとんどの列車は4番線から発着しているようですね。
東急電鉄から昭和末期に譲り受けた車両。
現在はデハ7000系として活躍中です。
1960年代に作られた車両をこうして目にできるのも、貴重な機会だと感じます。
全2両編成で運行する大鰐線の車内。
座席はすべて対面形式で一列に座るロングシートと呼ばれるものです。
つり革に残された「東急」の文字と、今ではなかなか見られない扇風機。
つり革の持ち手がりんごになっているのも青森らしくてキュート。
この重厚なレトロ感とポップさを織り交ぜた独特の空間も、ここでしか味わえないものです。
弘前れんが倉庫美術館を模したかのようなラッピングもかわいらしい。
もはやここにいること自体がアトラクションのようなもの。
乗れるだけで楽しい。
列車は定刻通りに大鰐駅を出発。
最初の停車駅、宿川原駅に到着。
一本のホームと線路のみが敷かれた、のどかな無人駅。
向かい側にはりんご畑が広がっています。
石川駅を出発してしばらくすると、JR奥羽本線と交差。
ほとんどの区間において、大鰐線はJR線と並走していることが分かります。
弘前駅から発着する弘南鉄道弘南線にはない特徴ですね。
義塾高校前駅に停車。
JR奥羽本線の石川駅までは歩いて10分ほど。
大鰐線の石川駅からだと15分ちょっと歩くので、ここが最寄りになるわけですね。
津軽大沢駅での列車交換 pic.twitter.com/7XqgMQsrSC
— 東北旅びより@東北の一人旅メディア (@tohoku_travel) April 22, 2025
大鰐駅から15分ちょっと、途中の津軽大沢駅にて下車。
列車交換も可能な構造になってます。
位置的には大鰐~中央弘前のほぼ中間地点くらい。
行き違いをするにはちょうどいい場所なのかも。
ホームと駅舎を繋ぐ通路に踏切はないので要注意。
木造の駅舎がいい雰囲気を醸し出しています。
現在は無人の津軽大沢駅。
2011年までは有人駅だったようで、窓口があった名残も感じられます。
車両基地も併設しており、無人駅ではあるものの構内は広め。
奥には最後の1編成となったデハ6000形の姿も。
今では貴重となりつつあるホーロー看板を拝めます。
大鰐行きの列車を待ったのち、列車が出発。
再び中央弘前方面を目指します。
雪の中、一本道をゆっくり進む大鰐線。
周辺にはりんご畑も多くあります。
季節が違う時にまた訪れたいですね。
弘前学院大前駅に到着。
駅名の通り、沿線には複数の高校や大学があることが分かります。
それでも少子化の波には逆らえなかったということでしょうか。
徐々に弘前の中心エリアへ近づいてきました。
ゆっくりとカーブを繰り返し、終点の中央弘前駅へ。
大鰐駅から約35分、中央弘前駅に到着。
列車1本分のみが停車可能な、終着駅としてはコンパクトな構内。
阪急の梅田駅や、上野駅のような頭端式ホームの風景がいい味を出してます。
大鰐線内では核ともなる当駅。
待合室もよく整備されており、自動券売機も設置されていました。

JR弘前駅まではここから約1.3kmほどの距離。
徒歩だと20分程度でしょうか。
ただ弘前公園や弘前れんが倉庫美術館などが近く、観光地へ向かうなら中央弘前駅の方が便利。
同社の弘南線と比べ、人の流れが明らかに違っている…というのが率直な印象でした。
実感が未だ湧きませんが、この見慣れた景色も残り数年…
時間の許す限り乗りたいですね。
【乗車記】弘南鉄道大鰐線|廃止迫るローカル線で大鰐から中央弘前へ|まとめ
以上、今回は「【乗車記】弘南鉄道大鰐線|廃止迫るローカル線で大鰐から中央弘前へ」という内容でお届けしました。
2027年度末で事実上の廃線となる弘南鉄道大鰐線。
のどかなローカル線の日常そのものを体験できる路線でした。
結果として、そののどかさが休止の決め手のひとつとなったわけで、これを素直に肯定していいのか、魅力としていいのかという気持ちがありますが…
ただ沿線風景、車両、建造物そのどれもが貴重なもので、旅行者の自分としては乗車する価値は十分にあると感じます。
休止間際になれば多くの旅行者で混雑する可能性もあるでしょうし、本来の姿をのんびり楽しむなら今がチャンスかもしれませんね。




