山形鉄道フラワー長井線の赤湯駅~荒砥駅間全線乗車記をお届けします。
大正時代に長井軽便線として開業し、現在は沿線住民の地域間輸送をメインとして今日も走り続けるフラワー長井線。
実際に乗って、県外から多くの鉄道ファンがこの地に訪れる理由がよく分かりました。
鉄道旅行者はもちろん、お花好きやレトロマニアなど様々な人が楽しめる路線です。
当ブログ「東北旅びより」では、以下の内容を紹介していきます。
- 山形鉄道フラワー長井線とは?
- フラワー長井線の旅行記・見どころ
- フラワー長井線の乗車におすすめの乗り放題切符
ぜひ参考にしてみてくださいね。
山形鉄道フラワー長井線とは?
山形鉄道フラワー長井線は、南陽市の赤湯駅から白鷹町の荒砥駅までを結ぶ第三セクター鉄道路線。
名前の「フラワー長井線」は、沿線に花の名所が多いことに由来しているそう。
田園風景の中を1両の気動車が走る、まさに絵に描いたようなローカル線。
その風景は映画「スウィングガールズ」をはじめ、ドラマや漫画の舞台にも使われています。
国鉄分割民営化でJR長井線となり、その1年半後に第三セクター鉄道として生まれ変わったフラワー長井線。
そのため、駅舎など至る所で国鉄時代のものと思われる痕跡も確認できます。
観光地だけでなく、随所で歴史や文化を感じられる見どころ満載の路線。
山形旅行の際におすすめしたいローカル線のひとつです。
【旅行記】山形鉄道フラワー長井線で沿線を観光!歴史を感じる見どころ盛り沢山の路線
赤湯駅からフラワー長井線に乗車
旅のスタートは赤湯駅。
山形新幹線つばさ号も停車する、南陽市の主要駅です。
パラグライダーを模した東口に対し、西口は小ぢんまりとしたログハウス風の駅舎。
東口はJR、西口は山形鉄道が管理しているそう。
跨線橋を渡り、フラワー長井線の発着する4番線ホームへ。
南陽市を代表する桜の名所「烏帽子山公園」をイメージしたピンクのラッピング車両。
国鉄・JR長井線時代の名残か、現在もホームを共同使用しているJRと山形鉄道。
ただ山形線は線路幅が違いますし、長井線ホームには車止めが設置されているため、米沢方面への走行はできません。
ホームの構造を見るに、山形新幹線開業前は南側へ直通できたのかもしれませんね。
4人掛けのボックスシート、窓に対面して座るロングシートが設置された車内。
定刻通りに赤湯駅を出発。
程なくして山形線と分岐し、荒砥方面へ進みます。
フラワー長井線は駅数17駅、路線距離30.5kmの短いローカル線。
地域間輸送をメインとしているため、利用者の大半が高校生と年配者です。
ただこの日は休日だったためか、観光客と思われる人もいて、座席がほぼ全て埋まった状態。
地方の盲腸路線でありながら活気を感じられ、少し安心に似たような不思議な気持ちになりました。
うさぎ駅長の宮内駅と日本三熊野 熊野大社
赤湯駅から二駅先、宮内駅にて下車。
国鉄長井線時代、当駅は宮内町駅という名称でした(同名の駅が他県に複数あるため)
現在の駅名の裏にうっすらと以前の名前が残っていますね。
昭和初期からほぼ変わっていないと思われる木造駅舎。
趣深い切符売り場も当時のまま。
宮内駅といえば、うさぎ駅長「もっちぃ」や「ぴーたー」「てん」がいる駅としても有名でしたね。
中でも2023年まで生きたもっちぃの年齢は13歳…
人間だと91歳に相当する年齢だったそう。
ラーメンの外食費ランキングでは度々日本一に輝く山形。
中でも南陽市は、人口に対してラーメン屋が県平均の約3倍多いことから、ラーメンの街としても知られています。
また駅周辺が中心エリアであることから、様々なジャンルの飲食店が点在しているよう。
ランチがてら散策するのもアリですね。
東北の伊勢、熊野大社。
和歌山県の熊野三山、長野県の熊野皇大神社とともに日本三熊野の一つに数えられています。
参道入口の大鳥居、茅葺屋根の厳かな社、力強くそびえ立つ銀杏の木。
いるだけで心が洗われるような、不思議な魅力があるのが印象的でした。
参拝後は神社横の「gelato en.(ジェラートエン)」にてジェラートを購入。
味は京抹茶、つや姫を選びました。
個性的なテイストも多く、次回訪問時にはまた違った種類のものもいただきたいですね。
100年越えの最上川橋梁とラーメン大好き小泉さんラッピング車両
宮内駅からは荒砥方面の列車に乗車。
乗車するのは漫画「ラーメン大好き小泉さん」のイラストがラッピングされた列車。
その名の通りラーメンを題材にしたストーリーで、ラーメンシティ南陽市らしいデザインだと感じます。
赤湯駅から乗車した車両と違い、こちらは全座席ロングシート。
左沢線の車両を彷彿とさせるような車内です。
中間にドアがないからか、やけに長く感じます。
今泉駅手前でJR米坂線と合流。
米坂線は数年前の豪雨の影響で、今泉駅~坂町駅間は代行バスでの運行となっています。
坂町駅より米坂線代行バスに乗車し、今泉駅へ。
終点までバスも鉄道もほぼ同じルートを走るよう。
津軽線の末端区間廃止がほぼ確定した中、こちらもバス転換の可能性がゼロではないだけに心が落ち着かない…
課題は山積みだけど、またいつか鉄道の車窓からこの景色を見れる日を願うばかりだ。 pic.twitter.com/fSQyqtAFJF
— なか / 東北旅びより (@naka_travel) June 3, 2024
米坂線代行バスの車窓から。
津軽線の蟹田駅~三厩駅間の廃止がほぼ確定した中、こちらもバス転換の可能性がゼロではないだけに果たしてどうなるのか…
課題は山積みですが、またいつか鉄道でこの景色を見れる日を願うばかりです。
最上川橋梁を渡るフラワー長井線。
元は明治時代に東海道本線の木曽川に架設された橋で、大正に入ってから長井線・左沢線に移設したらしい。
日本最古の現役鉄道橋として知られる、歴史的にも貴重な土木遺産。
知れば知るほど奥が深く興味深い路線だと感じる。 pic.twitter.com/L7nKBzxtN2
— なか / 東北旅びより (@naka_travel) August 6, 2024
最上川橋梁を渡るフラワー長井線。
この橋が現在の場所に架かったのは1923年のこと。
もともとは1887年に東海道本線の木曽川に架設されたものを、移設したんだそう。
左沢線にも同様の橋が使われており、こちらは国内最古の現役鉄道橋としても知られています。
明治生まれの歴史的にも貴重な土木遺産。
知れば知るほど奥が深く興味深い路線です。
最上川橋梁を渡ると、程なくして終点の荒砥駅に到着。
2003年にリニューアルした新駅舎には資料館も併設されています。
駅構内には車両基地も。
終着駅のため、線路末端には車止めが設置されています。
計画が順調に進めば、左沢線と繋がるはずだったフラワー長井線。
駅の構造を見るに、線路が先に伸びていてもおかしくないような、まるで途中駅のような作りをしています。
当時の情勢も重なり、今では夢物語となってしまった幻の路線。
もし全通していたら、周辺の交通事情はどんな変遷をたどっていたんでしょうか。
市役所と一体になった長井駅と旧長井小学校第一校舎
沿線の主要駅、長井駅にて下車。
2021年にリニューアルされた巨大な建造物に目を奪われます。
建物内には市役所の本庁舎も併設。
駅舎と市役所が一体となった建物は全国初だそう。
駅前からはタクシー・バスが発着しており、レンタサイクルもあることから、交通の拠点となっていることがうかがえます。
歴史を感じるホーム。
建物とのギャップがたまりません。
列車を待つ間に立ち寄ったのが、旧長井小学校第一校舎。
その名の通り学校として使われていた建物で、国の登録有形文化財になっています。
1933年にできた木造2階建ての校舎で、なんと2015年までは現役だったそう。
リノベーション後は交流施設として使われており、見学のほか併設のカフェでの飲食も可能です。
昭和初期にできたとは思えないほどにピカピカの床が印象的。
リノベーション時に多少は修復したのかもしれませんが、当時から大切に扱われてきたことには間違いないでしょう。
旧長井小学校第一校舎までは、長井駅から徒歩10分ほど。
近くには道の駅もあるのでセットで行くのもアリです。
大正時代の情景がそのまま残る羽前成田駅
長井駅から荒砥方面へ二駅、羽前成田駅で下車。
1922年に国鉄長井線の駅として誕生した羽前成田駅。
2024年には開業102年を迎えます。
旧長井小学校第一校舎と同じく、こちらも国の登録有形文化財となっているよう。
まさか令和に東北でこんな駅舎に出会えるなんて。
いわゆる国鉄のスタンダードな駅舎とは少し異なっており、うまく洋風を織り交ぜたオシャレなデザインだと感じます。
また大正時代の駅舎でありながら、状態がかなりいい。
さすが地元有志が維持活動をしているだけあって、長らく大切にされてきたことがよく分かります。
左側が切符売り場、右側が荷物預け口。
カウンターの支えが独特な作りをしていて、これも当時の歴史や建築技術を知る上では大変貴重でしょう。
当時の運賃表なども残っているのが驚きです。
ホームに設置されたベンチ。
現代にしてはあまりにも低すぎますし、開業当時から残っているものなんでしょうか。
踏切付近で不自然に線路がカーブしているのは、かつて向かい側にもホームがあった時の名残かもしれませんね。
こうしてみると、無人駅でありながら地元民に大事にされている駅だということが伝わってきます。
東北最古の木造駅舎 西大塚駅
続いてやってきたのは西大塚駅。
山形鉄道では川西町にある唯一の駅です。
1914年に開業し、2024年には誕生110年を迎える西大塚駅。
沿線かつ東北地方において最も古い木造駅舎として知られています。
もっと文化財として大々的にアピールしてもいいような気もしますが、あくまで沿線の日常の一部として馴染んでいるからこそ、より魅力的に感じるのかもしれません。
国鉄長井線の前身にあたる、長井軽便線の駅として開業した西大塚駅。
1913年に赤湯~梨郷間で開通し、翌年に長井まで延伸した際に誕生しました。
長井軽便線時代から残る沿線で唯一の駅舎。
日本の原風景に溶け込む木造駅舎が、まるで映画のワンシーンのようです。
羽前成田駅と同じく、国の登録有形文化財となっています。
西大塚駅はホームと駅舎が登録されているそう。
古い駅舎でよく見かける「よごさぬように美しく」の小さなホーロー看板。
古い木造駅舎を保存するのは決して簡単ではないはず。
関係者の方々には本当に頭が上がりません。
全国的にも大変貴重な文化財…どうかこの風景が長くあり続けてくれたらと願うばかりです。
赤湯駅へ戻ってきました。
西大塚駅から乗車したのはダリヤのラッピング車両。
日本最大級の「ダリヤ園」を有する川西町をモチーフにしたデザインです。
沿線住民の地域間輸送をメインとして今日も走り続けるフラワー長井線。
実際に乗って、県外から多くの鉄道ファンがこの地に訪れる理由がよく分かりました。
鉄道旅行者はもちろん、お花好きやレトロマニアなど様々な人が楽しめる路線です。
【お得な切符】山形鉄道フラワー長井線での旅行におすすめの乗り放題パス
電子チケット
- 電子チケット「RYDE PASS」
- モバイル乗車券「QUICK RIDE」
以上のアプリを利用すれば、回数券やフリー切符などをスマホで事前購入可能。
窓口で手続きをする手間が省けます。
週末パス
週末パスは、指定エリア内の鉄道が2日間乗り放題になる土日祝日限定のフリー切符です。
週末パスの魅力は何と言っても、乗車できる路線の多さ。
JRの路線に加え
山形鉄道、福島交通、阿武隈急行、会津鉄道(西若松~会津田島)、北越急行、上田電鉄、しなの鉄道、長野電鉄、松本電鉄、ひたちなか海浜鉄道、鹿島臨海鉄道、富士急行、伊豆急行
以上の地方私鉄、第三セクター路線に乗車できます。
乗り放題切符として代表的な青春18きっぷや北海道&東日本パスでは、これらのほとんどの路線が使えません。
JR以外の路線がここまで使える切符は週末パスくらいなので、かなりの強みですね。
【旅行記】山形鉄道フラワー長井線で沿線を観光!歴史を感じる見どころ盛り沢山の路線|まとめ
以上、今回は「【旅行記】山形鉄道フラワー長井線で沿線を観光!歴史を感じる見どころ盛り沢山の路線」という内容でお届けしました。
沿線住民の地域間輸送をメインとして今日も走り続けるフラワー長井線。
実際に乗って、県外から多くの鉄道ファンがこの地に訪れる理由がよく分かりました。
鉄道旅行者はもちろん、お花好きやレトロマニアなど様々な人が楽しめる路線です。